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第99回日本糖尿病学会中部地方会 第99回日本糖尿病学会中部地方会

会長挨拶

糖尿病の医学・医療はいま、激動の時代を迎えています。長らく課題であった心・腎・血管病の予防や進展阻止について、エビデンスをもつ治療が実践可能となったこと。治療薬やデジタルデバイスの飛躍的発展により、血糖値のマネジメント技術が目を見張る進歩を遂げつつあること。AIの普及もすぐそこでしょう。そして、2型糖尿病の病態基盤としての肥満に対する薬物療法や外科療法の可能性が格段に拡大したこと、などがあります。一方、超高齢社会における糖尿病医療のあり方、担がん患者における血糖マネジメントなど、治療を難しくする要因も急速に変化しています。これら変化はいずれも、これまでの糖尿病診療の考え方や枠組みを根底から覆しうるものです。

では、激動の時代、糖尿病医には何が求められているのでしょうか? そう考えたとき、変化の時代だからこそ原点に立ち返り、個別の症例から普遍的原理の片鱗を学びとることが重要ではないか、と思い、本会のテーマを「新 糖尿病学への挑戦-症例に学び、原理を語ろう!」としました。指定講演2題、会長企画2セッション、糖尿病医療者・研究者のダイバーシティを promote する委員会企画に加え、15のスポンサードセッション、そして何よりも、多くの先生方からご応募頂いた144題の一般演題を通して、新しい時代の新しい糖尿病学の姿を、先生方とともに思い描いてみたい、と考えています。

私の郷里、奈良には、新薬師寺というお寺があります。創建は奈良時代、天平19(747)年に遡る古刹です。ここにいう「新」とは「新しい」ではなく、「新たか(あらたか)」、すなわち、「神仏の霊験や薬の効き目が著しく現れる様子」であるとの説があります。疫病に悩まされた先人達の、病気快癒への想いが込められた「新」の一文字とすればその重みはひときわです。本学会のテーマ、「新 糖尿病学」が単に新しいというだけではなく、糖尿病とともに生きるすべての人とご家族、同僚、ひいては社会のすべての人にとって健康と幸せをもたらすものであることを願い、ご挨拶とさせていただきます。

では、名古屋でお目にかかりましょう!

名古屋市立大学大学院医学研究科 消化器・代謝内科学分野
田中 智洋